心の問題について

心の問題は、様々な精神的・身体的な症状として現れます。例えば、うつ・ひきこもり・対人恐怖症(社会不安障害)・依存症・摂食障害(拒食症・過食症)・自傷行為・パニック障害・PTSD・等です。これらの症状は、いずれも、その人が休息を必要としていたり、誰かの援助を必要としている時のサインです。
 

このような症状で悩んでおられる方や、このような症状の方が身近におられましたら、お気軽にご相談ください。相談するのは、決して恥ずかしい事ではありません。
むしろ必要な事であり、大切な事です。

このページでは、それらの一部についてご説明します。
 

☆鬱(うつ)

現代社会はストレスに満ちており、うつ病になる人は年々増加しています。仕事の多忙さ、人間関係、感情の過度の抑圧、などが原因の場合が多いようです。
 

うつは珍しい病気ではなく、一生の間に国民の3割位の方が経験するといいます。症状としては、毎朝起きた時の憂うつ感、夜眠れなくなる、涙もろくなる、食欲が落ちる、便秘、動悸、疲れやすくなる、今までできていた事ができなくなる、何をしても楽しくない、イライラする、ものごとを決められなくなる、死にたい気持ちが出てくる、などがあります。

うつの症状は女性ホルモンの減少によっても生じるので、一般に女性の方がかかりやすく、男性の約2~3倍の患者さんがおられるとのことです。女性の場合、妊娠・出産後、閉経後になりやすいと言われています。

うつ病が原因で、すべての事に悲観的になり、発作的に死を選ぶ人が後を絶ちません。こちらは男性の方が多く、女性の3~5倍の人数です。男性は人に弱さを見せられず、誰かに相談することも少ないので、それが原因ではないかと言われています。
うつの時は、仕事、人間関係、健康状態、経済面などすべてが八方ふさがりのように感じられますが、それは症状のせいでもあります。

希望を捨てないでください。うつの時は脳が疲れているのですから、できるだけリラックスして、ゆっくり休むことが大切です。身体の運動はした方が良いです。血行が良くなり、脳をリラックスさせる効果もあります。
眠れないからと言って、お酒を飲むのは良くありません。寝付きは良くなるかも知れませんが、眠りが浅くなり、脳の疲れが取れません。
 

うつの時は、引っ越し、結婚、離婚などの重要なことを決めるのは避けた方が良いようです。悲観的になり、正常な判断ができなくなっていることが多いからです。
何をするのもしんどくて、何もしたくない、でも何かしなくてはいけないという焦りも感じるという苦しい状態になりがちですが、ゆっくり休み、周囲の人が温かく接してくれていると、必ず回復していきます。必ず良くなるという、希望を持ち続けてください。

うつになったかなと感じたら、専門医にかかり、適切な治療を受けてください。カウンセリングも、お役に立つと思います。

☆依存症

アルコール、タバコ、薬物などの物質に対する依存症、パチンコ等ギャンブル、パソコン、買い物、セックスなどの行為に対する依存症、恋愛、共依存、ストーカーなどの人間関係に対する依存症、等々、依存する対象はいろいろあります。共通しているのは、止めようとしても止められない、それ無しでは生きていけない、という状態になっている事です。

人は何かに依存して生きています。子どもは親に依存し、大人は趣味やスポーツや仕事などに喜びや生きがいを見出している場合もあります。しかし、このような依存はごく自然な事で、健康的な事でもあります。

では、「依存症」と普通の「依存」とは、どこが違うのでしょうか?

例えば「アルコール」の場合で言うと、お酒を飲むか飲まないかを自分でコントロールでき、仕事や家事などの日常生活に支 障を来たしていなかったら、健康的と言えます。しかし、飲みだすと止まらず、飲酒量のコントロールができなくなり、「お酒を止められない」「アルコール無しではいられない」という状態になったら「アルコール依存症」です。 アルコール依存症になると、仕事ができなくなったり、家庭内の不和が深刻になったり、肝臓障害や神経症・うつ病などを合併する事も多く、早目の対処が望まれます。

他の依存症についても、「止めたくなっても止められない」「それ無しでは生きていけない」という状態になり、生活に支障をきたすようになると問題です。

「共依存」とは、夫と妻、親と子供などの間にある愛情と支配の葛藤から起こる“関係への囚われ”です。“自分が必要とされる必要”を強く求めている状態とも言えます。例えば、ギャンブル依存症の夫を持つ妻が、夫を救う事ができるのは自分しかいないと思い込み、夫を何とか助けようとして懸命に世話をすると、夫はより一層ギャンブルに溺れていくという悪循環に陥る事があります。このような関係は共依存の困った状況として捉える事ができます。

いずれの場合も、カウンセリングや自助グループへの参加はお役に立つでしょう。

☆摂食障害

拒食症(神経性無食欲症)と過食症(神経性大食症)に分けられます。

拒食症は、食べる事および正常な体重を維持する事を拒否している状態です。極端に食事の量を減らしたり、少し食事した後に下剤を飲んだり、吐いたりする事もあります。また、過剰な運動をして体重を減らそうとする事もあります。このような状態が続くと、著しい栄養失調状態になり、無月経(女性の場合)、貧血、低血圧、低体温、不整脈、脱毛などの症状が現れたりします。

過食症は、『食べたい』という衝動に駆られて無茶食いをしてしまう状態です。食べた後に意図的に吐いたり、下剤や利尿剤を飲んだりする場合も多くあります。ほとんどの人が、自分の無茶食いを恥ずかしいと感じていて、症状を隠そうとしますから、無茶食いは普通、秘密裡に、できるだけ人目につかないように行われます。

過食嘔吐を繰り返す事によって、胃酸で歯がボロボロになったり、耳下腺が腫れたりする事があります。また、手で喉の奥を刺激して吐いている人は、手の甲に歯で繰り返し傷付けた事によるタコや傷痕ができる事があります。女性では、月経不順や無月経になる人が時々見られます。

過食は、不快な気分の時、対人関係のストレスを感じた時、食事制限後、または体重・体型・食物に関連した感情がきっかけとなって起こります。食べる事で、一時的に不快な気分が和らぎますが、その後に自己否定的な感情や罪悪感、抑うつ気分が続く場合が多いようです。また、過食の後、その代償として1日以上の絶食をしたり、過度の運動をしたりする場合もあります。

摂食障害の人は、自分の身体の体型や大きさの認知に歪みが生じており、体重の増加を強く恐れています。自分が全体的に太り過ぎていると感じている人もいます。また、自分が痩せているとは認めるけれども、腹部・臀部・太腿などが太り過ぎていると気にしている場合もあります。

食べ物に関する事で頭の中が一杯になり、レシピを集めたり、食物を貯め込んだりする人もいます。抑うつ気分、ひきこもり、イライラ感、不眠、などの症状が出てくる事が多いようです。発症者の90%以上が女性で、13~18歳で始まるケースが多いようです。発症率はここ数十年で増加してきています。
 

 
背景としては、食物が豊富にあるのに、特に女性にとって、痩せている事が魅力的と見られる社会的価値観があると思われます。また、大人になることへの拒否、性的接触への恐怖、幼少時の親子関係などが根底にある場合も少なくありません。

いずれにしても、医学的な治療、カウンセリングなどの適切なケアを受ける事が大切です。

☆PTSD

“Post Traumatic Stress Disorder”の頭文字を並べたもので、日本語では“心的外傷後ストレス障害”と訳されています。

アメリカで、ベトナム戦争帰還兵の戦争後遺症の治療過程で生まれた概念で、アメリカ精神医学会が1980年に出した診断基準“DSM-Ⅲ”に、最初に載せられました。戦争、地震、火災、交通事故などを経験したり、テロ、強盗殺人、レイプ、激しい暴力などの犠牲者になるといった事をきっかけとして発症します。
 

 

症状としては、次の3つが主なものです。

  1. 悪夢やフラッシュバックによって、トラウマとなった出来事を繰り返し再体験する。
  2. トラウマ体験と関係する場所や人を避ける。または、感情が鈍麻する。さらには、重いうつ状態になったり、未来に対する展望が持てなくなる。
  3. 常に神経が緊張していて、眠れない、イライラする、ものごとに集中できない、少しの物音や周囲の変化に驚愕する。

具体的には、外に出るのが怖い、乗り物が怖くて乗れない、夜眠れない、性的関係が持てない、アルコールや薬物に依存するなど、日常生活に支障をきたす事が多く、自殺に至る危険もあります。

日本では、1995年(平成7年)の阪神大震災の後遺症として、マスコミによって広められ、世間の注目を集めました。約半数の人たちは3ヶ月以内に回復しますが、時間が経ってもなかなか回復しない人たちも多くおられます。そのような場合は、医学的な治療やカウンセリングが必要です。

薬物療法だけでは、なかなか回復の効果は得られにくいのが現状です。薬物療法と併用して、症状に焦点を当てた行動療法や認知行動療法などを行なうと効果的であることが、アメリカでの臨床で確かめられ、日本でも応用されています。

☆アダルト・チルドレン(AC)

子どもの頃、心を傷付けるような言葉、態度、暴力などのある家庭や、自分の感情を強く抑圧しなければならないような環境で育ったため、心身のバランスを崩しやすく、人間関係が苦手で、孤独感や緊張感を抱えて生きてきた人達のことを、アダルト・チルドレン(AC)と言います。
 

 
歴史的には1970年代、アメリカの病院でソーシャル・ワーカーをしていたクラウディア・ブラック(Claudia Black)らが、アルコールや薬物依存症者の子ども達の援助をしていく中で作られた概念です。彼らは、依存症者のうち小さな子ども達を「ヤング・チルドレン」、10代の子ども達を「ティーンエイジ・チルドレン」、そして大人になった人達を「アダルト・チルドレン」と名付け、それぞれのグループにプログラムを提供しました。

これがアダルト・チャイルドという言葉が生まれた背景です。つまり、アダルト・チャイルドとは「問題のある状況の中を一生懸命生き抜いて大人になった人」という意味です。

アダルト・チャイルド(AC)は、子どもの頃から親や家族に気を遣い、自分の気持ちを押し殺して生きてきたため、自分の人生を生きることが困難になっています。そして、様々な心身の症状が現れてくることもあります。アルコール・ギャンブル・人間関係などへの依存、摂食障害、健忘症、対人恐怖症などです。しかし、症状を表現できる人はむしろ少数派で、多くのACはその特有の孤独感や緊張感を誰にも打ち明けることができず、もがき苦しみながらも表面上は普通の”おとな”として社会生活を営んでいます。

ACは、常に親たちの人生に振り回され、親たちの脇役としてしか生きられませんでした。そして、おとなになっても不健全な家庭の中でだけ通用していた役割から降りられなくなっています。

ACとは、そのように成長してきた人が育った家庭から受けた影響や心の傷を認め、自分の人生を取り戻すための鍵となる言葉です。病名や他人から貼られるレッテルではありません。自分の人生をいきいきと生きるための「応援歌」のようなものです。「もう自分は自分のままでいいんだ、ありのままで生きていいんだ」という、自己肯定への第一歩となる言葉なのです。
 

 
ACの自覚がある人は、自助グループに集ったり、カウンセリングを受けたりして、自分の経験や感情を分かってくれる人に話し、自分を受けとめてくれる人や共感してくれる人と出会い、自己肯定感を高めていくのが良いでしょう。
また、インナーチャイルド・ワークによって、子供の頃に傷付いた自分を大人の自分が癒していくというイメージを使った方法も役立つでしょう。

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